大卒就職率、今春93.6%に改善 個別支援が効果…日本経済新聞
今春卒業した大学生の就職率は4月1日現在で、前年同期比2.6ポイント増の93.6%だったことが15日、文部科学省と厚生労働省の調査で分かった。過去最低の前年同期を上回り、4年ぶりに改善した。厚労省はハローワークと大学が連携し、支援を強化した結果、中小企業への就職が進んだためとみている。
就職率は改善したとはいえ大企業を中心に雇用環境全体は依然、厳しい状況が続くとみられる。小宮山洋子厚生労働相は15日の閣議後の記者会見で、雇用情勢は「厳しい状況のままだ」との認識を示した上で、「大学とハローワークの連携を密にしていきたい」と就職活動支援を強化していく考えを表明した。
調査は全国の国公私立大62校を抽出し、就職希望者の就職状況を調べた。昨年10月1日の内定率は59.9%。今年2月1日時点では過去3番目に低い80.5%だった。10月1日時点からの伸びは、過去最高の33.7ポイントを記録した。就職率は就職希望者のうち、就職した人の割合。今春の大卒者は推計55万人で、うち就職希望者は、前年同期比2.4ポイント増の68.9%の38万1千人。就職できたのは35万6千人となり、2万5千人が内定を得られなかった。
大学生の就職率は1996年の調査開始以降で高い方から6番目の水準。男子が94.5%、女子が92.6%。前年春と比べた上昇幅は男子が3.4ポイントで、女子の1.7ポイントの2倍となった。国公立理系が96.5%で最高で、最も低いのが私立文系の92.9%だった。
厚労省などは就職支援の一環として、全国のハローワークに就職相談員のジョブサポーターを配置。今年1~3月、未内定者を対象に、集中的な個別支援を実施した。ジョブサポーターを利用し、中小企業を中心に約1万5千人の就職が決まった。就職率で、4.1ポイントの押し上げにつながった。就職率上昇の背景には、採用意欲が高い中小企業と大手志向が根強い学生との雇用のミスマッチがある程度、解消されたことが大きいとみられる。厚労省は「就職率は上昇したが、雇用環境の改善は進んでいない」と分析している。
一方、文科省の調査では、就職を希望した高校新卒者の3月末時点の就職内定率は前年同期比1.6ポイント増の94.8%だった。学校やハローワークを通じて求職した高校新卒者を対象にした厚労省の調査でも同1.5ポイント増の96.7%となった。
東日本大震災の被災地では岩手、宮城、福島の東北3県の内定率は98.4%、97.8%、97.5%となり、いずれも前年を上回った。首都圏などの企業が被災地の高校生を積極的に採用したことが要因という。(2012/5/15付:日本経済新聞)