日本企業の「英語」に対する意識調査。採用・人事への影響は?
今回は「自分で教材をつくるオンライン英会話 Best Teacher(以下ベストティーチャー)」と「ソーシャルリクルーティングの世界」の、ブログでのコラボレーション企画として、ベストティーチャーが独自に行った「2012年日本企業の英語意識大調査」の結果について紹介します。
この調査データは、企業の経営者や人事担当者を対象に、ベストティーチャーが独自にアンケート調査を行い集計データとしてまとめたものです。
今回「ソーシャルリクルーティングの世界」では、この調査データを参考にさせていただき、「採用・人事」という観点から分析します。
回答企業の属性・従業員数
今回の調査の回答企業は52社です。そのうち、通信・インターネット関連の企業が35%、ソフトウェア・情報処理が8%となっており、IT企業が全体の半数近くになっています。
回答企業の従業員数においては、50人以下の企業が46%、100人以下の企業は67%となりますので、中小企業が多いといえます。
社内公用語化はまだ進まない
Q.英語を社内公用語化する取り組みに関して教えてください。
2010年6月にユニクロと楽天が相次いで、社内公用語を英語とすることを発表して大きな話題になりました。あれから早2年が経ちましたが、英語の公用語化を「検討中」と回答した企業は全体の25%となりました。検討段階にある企業でさえ、全体の1/4であり、まだまだ英語の公用語化は極一部の企業のみであることがうかがえます。
なお、501人以上の従業員を有する企業に限ってみると、「検討中」と回答した割合は30%となります。一方で、100人以下の企業では「検討中」は23%となっています。
このことから、企業規模が大きくなるにつれて英語の公用語化の検討が進んでいる企業が多く、企業規模が小さくなると検討企業は少なくなっていることがわかります。
企業の採用基準を考えてみると、大企業と呼ばれる企業では、TOEICなどの英語能力を測るテストでの点数が採用時の足切り条件になっている企業もありますが、従業員規模の小さいベンチャー企業やスタートアップ企業も含まれる中小企業では、即戦力として働く能力として英語以外のスキルを重視する傾向があります。今回の調査データは、企業の採用基準を反映しているといえるでしょう。
社内公用語化で採用活動はどうなる?
Q.英語を社内公用語とした場合、今後の採用にどのような影響があると思いますか?
英語の社内公用語化を実施した場合の採用への影響について、回答者全体の結果としては、前向きな意見である「いい影響がある」という回答が29%、どちらかというと否定的な意見である「人材が獲得しづらくなる」という回答が同じく29%となりました。現時点では、英語の社内公用語化についての採用面での影響については、賛否両論の考えがあることがわかります。
ただし、従業員規模が501人以上の企業に限ってみると、「いい影響がある」と回答したのは30%、「人材が獲得しづらくなる」と回答したのは20%となりました。このことから、従業員規模の大きい企業では、全体と比べて、英語公用語化の影響を前向きに受け止めている企業がやや多いことがうかがえます。
社内で英語を話せる人材はどれくらい?
Q.社内で英語を話せる人材はどのぐらいでしょうか?
社内で英語を話せる人材の割合については、全体の回答では、「10%以下」と回答した企業が68%となりました。また、「50%以上」と回答した企業は全体で13%となりました。まだまだ、英語を話せる人材を獲得している企業が少ないことがわかります。
ただし、この調査では、「英語が話せる」のレベルが明確に定義されていないため、回答企業によって「話せる」と判断した基準が異なる可能性があることは注意すべきでしょう。
英語スキルは年収に影響する?
Q.英語スキルは年収に影響する?
英語のスキルの有無による年収格差についての質問では、全体の88%が「年収は変わらない」と回答しました。
なお、従業員数が101人以上の企業では「英語が話せる人材と話せない人材で、年収の差はない」という回答が100%になりました。
上述したように、大企業は英語の必要性や公用語化などに比較的積極的にも関わらず、現状では英語の習得に対する給与面における差は存在していないことがわかりました。
昇進・昇格に求められるTOEICの合格ラインは?
Q.昇進・昇格において求めているTOEICスコアをお教えください。
昇進・昇格におけるTOEICスコアの要件については、全体の81%の企業が「TOEICスコアは参考にしていない」と回答しました。また、TOEICスコアを昇進や昇格の参考にしている企業では「730点以上」を対象にする企業と、「729点以下」でも対象にする企業が同じ10%ずつとなりました。今回の調査データからは、従業員規模による顕著な違いは見いだせませんでした。
英語研修・教育プログラムは?
Q.英語研修・教育プログラムは?
社内の英語研修などのプログラムについては、全体の67%が「ない」と回答しました。「実施中」や「検討中」と回答した企業は1/3程度となっています。
すでに実施中や検討している企業の半分以上が選ぶ英語研修・教育プログラムは「英会話スクールへの通学」でした。外部研修に対しての企業向け助成金などもあるので、こうした制度を活用すれば、企業が従業員を外部研修に参加させやすくなります。今後手軽に利用できる英会話スクールへの派遣という研修スタイルは増える可能性もあるでしょう。
[まとめ] 英語ができる人材は景気低迷の打開策になる可能性を持つ
今、グローバル化の必要性をうったえるような論調や、ソーシャルゲームなどで世界進出を果たす企業の躍進のニュースなどが増えています。しかし、今回の調査では、アンケートの回答企業数が少なく、また全産業や全企業規模を網羅している訳ではないため一概には言えないものの、企業の英語への取り組みはまだ十分であるとは言えないという結果になりました。
以下の求人広告のように、約50年前から企業(当時のソニーはまだベンチャー企業と言える規模)によっては、英語の話せる人材を積極的に募集していることからも分かる通り、英語を話せる人材は採用市場において一定のニーズはあります。
一方、日本企業全体で見てみると、かつては国内需要だけでも十分な市場があったがゆえ、英語ができなくても、採用時や社内の昇進などに大きく影響することはほとんどありませんでした。
しかし、昨今の国内需要の低迷や、メーカーなど今まで日本を支えてきた大企業の国際競争における劣勢な状況に加え、ユニクロ、楽天などのように企業活動における英語の重要性を、リスクをとって取り組む企業が世界で躍進している事実により少しずつ変わろうとしています。
特にポテンシャルに投資する意味合いの強い新卒採用においては、これからの流動的な市場でグローバル化にも対応できる可能性として、今後英語は非常に重要な選考基準になってくる可能性も強いと考えられるでしょう。
なお、今回の調査データを提供しているベストティーチャーのようなオンラインで英会話を学べるような環境も整っています。また、英語の教材も、十数年前までは購入しなければなりませんでしたが、今ではインターネット上に生の英文や動画などがたくさんあります。自分が興味のあるトピックを中心に英語の素材に触れるように習慣付けるだけでも、英語能力のアップにつながります。ぜひ、自分にあった英語学習方法を探してみてください。