2015年までに創出されるビッグデータ関連の雇用機会、世界で440万人分、米国で190万人分
米国Intelや米国IBMなど大手IT企業の低調な四半期決算の発表が相次いだ後だけに、米国Gartnerのアナリストは、米国フロリダ州オーランドで開催中の同社のSymposium/ITxpoで、さまざまな要因を理由に挙げて暗い経済見通しを明らかにした。しかし意外にも、同社の調査部門の責任者、ピーター・ソンダーガード(Peter Sondergaard)氏は、今後のIT雇用について明るい展望を描いた。
Gartnerは2012年の世界IT支出の成長率について、当初の数字から下方修正した見通しを維持しており、前年比3%増にとどまると見ている。だが、IT雇用、少なくともその1分野であるビッグデータ関連の雇用は順調に拡大する見通しという。
企業がデータを収益化する取り組みを進める中、ビッグデータ(考えうるあらゆるソースから収集され、分析される膨大なデータを指す)は、雇用創出のエンジンになりつつあると、Gartnerは指摘している。同社によると、2015年までに、ビッグデータをサポートするために世界で440万人分のIT雇用の機会が創出され、このうち190万人分が米国で創出される見通しだ。
Gartnerはこの数字に経済乗数を適用し、米国ではビッグデータ関連の新規IT雇用1人につき、IT以外の業界で3人の雇用機会が生まれると計算、今後4年間で合計600万人分の雇用機会が創出されると予想している。
しかし、これらの予想にはただし書きが付いている。必要なスキルを持った労働者が足りないことから、ビッグデータ関連雇用の需要は3分の1しか満たされない見通しという。
「業界には人材が十分にいない」とソンダーガード氏。「教育が我々のニーズに対応できていない」
米国Northeast Georgia Health SystemのCTO(最高技術責任者)、グリフ・ロー(Griff Law)氏は、データ・アナリティクス業務で特に顕著だが、IT業務は全般的に採用が難しいと語った。
「ヘルスケア業界に関して言えば、需要は確かにある」とロー氏。同氏の組織ではこの6カ月間、15件の仕事に空きがあるという。
このうち6件はデータ・アナリティクス関連の仕事で、BIツールやビッグデータ・アナリティクス・ツールを使えるビジネス・アナリストと、ITスキルとデータ・スキルを併せ持つ臨床アナリストがその内訳だ。また、ネットワーク・エンジニアなど、他のタイプのITスキルが必要な仕事にも空きがあるという。
企業がこうしたデータの分析、活用など、デジタル化を収益に結びつける取り組みを推進していることから、今後数年間に新しいタイプの仕事が生まれる見通しで、その1つとして”最高デジタル責任者”がある。Gartnerは2015年までに、25%の組織が最高デジタル責任者を置くようになると予想している。
なお、Gartnerは2013年の世界IT支出については、2012年の予想額(3.6兆ドル)から3.8%増えて3.7兆ドルに達するとの見通しを示している。ただし、最近のIT企業の四半期決算にも見られるように、景気動向が不透明になっていることから、この見通しは今後修正される可能性がある。