「CSR」重視の会社が増加、生きる目的を追う若者獲得へ
人は誰しも「良い会社」で働きたがるし、企業がトップレベルの人材を採用し定着させるためには「企業の社会的責任(CSR)」を果たしていることが必要だというのは専門家の一致した見解だ。
しかし、今では人々は「良い会社」で働くだけでは不十分で、「良き社会人」でもありたいと願っている。
企業の社会的責任などについての著書もある米カリフォルニア大学バークレー校のケリー・マケルハニー氏によると、今日の働く若い人々にとっては、社会貢献とは自分自身で参加すべき必須の活動なのだ。
社員の会社への忠誠心や働く意欲とCSRとの関連は大きな注目を浴びており、数字でもその関連性が示されている。ある調査によると、社会貢献活動に積極的な企業では、そうでない企業と比較して、従業員の士気は55%高かった。そのほか、業務効率は43%、会社の社会におけるイメージは43%、従業員の忠誠心は38%それぞれ高くなっている。
マケルハニー氏は、CSRが企業への関与を促し続ける最良の手段のひとつだとの見方を示す。
誰しも「生きる目的・働く目的」を探しており、若者たちは、社会貢献でこの「目的」を得ようとしている。そのため、彼らが仕事選びにおいて最も重視することは、「自由に働けるのか」とともに「その仕事に意味があるのか」ということだとマケルハニー氏は説明する。
そしてインターネットの普及により、若者たちの関心と貢献の範囲は大きく広がっている。
インターネットサイトの「ボランティアマッチ」は、企業の従業員がインターネットを通じてNPOなどのためにボランティア活動を行えるように手助けをしている。2011年には、衣料品大手のギャップ、米小売大手のウォルマート・ストアーズ、大手金融機関のモルガン・スタンレーなどの社員を含む人々が、合計で550万時間ものボランティア活動に従事した。
大手医療サービス企業のユナイテッドヘルス・グループでは、従業員が休み時間などを使い、顧客管理やソフトウエア開発などのNPO支援活動をボランティアマッチを通じて行っている。同社によると、過去1年間では全世界の9万9000人の社員の79%、幹部職員では97%がこのボランティア活動に参加した。
一方、ケーブルテレビ・チャンネルなどを運営するディスカバリー・コミュニケーションズでは1年に1日、職員がそれぞれの専門技能を生かした貢献を行っている。社会貢献により、異なる部署の従業員の交流が深まる利点もあると同社は述べている。
ボランティア活動などが、一時的流行、あるいは企業のPR活動の一環だと見られる可能性があることも意識して、企業側も、長期的な様々なメリットについても熱心に強調している。
あるコンサルタント会社の2010年の調査研究によると、CSRは、企業の競争力にも大きな影響を与えており、企業側では業績向上の手段ともみなしている。
さらにCSRは、価格や品質と並んで企業のブランドイメージにとって最も重要な要素の1つだとの見方も広がっている。ある調査によれば、世界の消費者の87%は、企業が社会的責任を最低でも事業と同じ程度重視すべきだと考えている。
企業イメージやブランド、流行などが専門のあるコンサルタントは、CSRを重視し雇用者として良い会社になることは、従業員の士気を高めるだけでなく、消費者に対しても重要な意味を持つと述べている。