米雇用統計発表前に知っておくべき5つのこと
米労働省が7日に発表する雇用統計をめぐって皆さんが気もそぞろなら、以下の5つのことを知れば、気分が落ち着くだろう。
1.最近の雇用状況は目を見張るほど良くないが、昨年と比べると、労働市場は明らかに速く回復しており、これは経済にとって好ましい兆候だ。ダウ・ジョーンズ経済通信の調査によると、エコノミストたちは7日発表の5月の非農業部門就業者数が16万9000人増えて、4月の16万5000人増とほとんど同程度と予想している。失業率は7.5%で横ばいと予想している。懸念はあるものの、労働市場は徐々に回復している。その速度が非常にゆっくりなだけだ。今年に入り、雇用者数は月平均で19万6000人増えており、12万人程度を大きく上回っている。12万人というのは、労働市場への新規参入による失業率上昇を防ぐために必要とされる人数だ。月間のデータは変動が激しく、修正される可能性があるが、雇用者数の3カ月平均(変動による差を取り除くのに役立つ)は5カ月にわたって20万人を超えており、昨夏から明らかに改善してきた。
2.役に立つと断言はできないが、新規失業保険申請件数、つまりレイオフ(解雇)を示す指標は改善してきている。新規の申請件数は最近わずかに増加したにもかかわらず、労働省が雇用統計を準備する週は5月の週であり、4週移動平均が34万人前後だった。これは、前月同週の約36万人の水準をかなり下回った。モルガン・スタンレーのエコノミスト、デービッド・グリンロー氏は「これは、労働市場の状況が根本的にいくらか改善している」ことをうかがわせると話す。
3.消費者の景気に対する見方は好転している。これは民間セクターの消費者関連部門の雇用の伸びを促すと思われるトレンドだ。最近の雇用増の最大のけん引役は、小売店、レストラン、病院、それにゴルフコースといったものだ(経済学用語では、小売り、医療、娯楽産業分野と言う)。一方、製造部門の雇用は年初に増加して以降、停滞している。これは国防費削減や世界的な需要低迷のせいかもしれない。そして、政府職員の給与はもちろん圧迫されてきた。このことは5月にもっと予想しておいた方がいい。給与税減税が1月に期限切れになったにもかかわらず、米国の消費者は自らのしぶとさを証明してきた。財布を開き、外車や携帯電話を購入して米国の輸入額を増やしている。複数の調査によると、米国人の経済に対する懸念は過去5−6年間より緩和し、自信を持つようになっている。この主因は株価上昇、住宅価格の改善、家計のバランスシートの強化、そしてお手頃なガソリン価格にあり、これが循環して雇用が着実に増えている。こういったトレンドは続く公算が大きい。
4.一律的な連邦予算の強制削減であるシクエスターが5月の雇用統計に大きな打撃になるかどうかは不明だ。しかし、例年より温暖な天候が建設やその他の部門の雇用急増を促した可能性がある。国防費の削減や増税が企業、とりわけ政府契約に依存する企業の採用を減らしてきた、と懸念する一部の人々がいるが、4月の雇用統計にはそれがあまり表れなかった。とりわけこういった影響が出やすい「専門およびビジネスサービス部門」のカテゴリーで表面化しなかった。実際にはこういったサービス部門の雇用が増えている。実際のところ、政府の予算削減の影響が(政府の仕事以外で)唯一表れているのは、週の平均労働時間の減少で、恐らく一時帰休の結果だろう。コンサルティング会社キャピタル・エコノミクスのポール・アシュワース氏は「政府の予算削減は一切大きな影響をもたらさなかったはずだ」と話す。それと同時に、建設部門の雇用が急増する可能性があると考える根拠が存在する。年初は気温が低かったために建設部門の雇用が減少し、それまで数カ月間増加していた雇用者数は4月に減少に転じた。このトレンドは今月反転するかもしれない。
5.逆に、もし米国で財政引き締めが行われておらず、世界の経済成長が鈍化もしていなかったとすれば、雇用市場がどれほど健全だっただろうと想像してみるといい。米国の財政政策は増税や政府の予算削減を通じて経済成長を抑制している。それだけに、労働市場は立派な成績を収めていると言える。これは、これらの重しがなくなれば、状況が目に見えて改善する可能性を示唆する。ひょっとしたら今年下半期か14年にはそうなるかもしれない(簡単に言えば、反事実を想像してみようということだ)。このことは、連邦準備制度理事会(FRB)の幹部が来年の成長が加速すると予想する一因になっている。また恐らくそれは、FRBはいつ金融緩和政策を反転させ始める決断をするのか、と日本株から米ジャンク債に至るあらゆる金融商品の投資家たちが心配している理由でもあろう。