今月開始された厚生労働省”ブラック企業”調査とは?
厚生労働省は、9月1日より長時間勤務などを強いて労働者を使い捨てる”ブラック企業”の実態を把握するため全国一斉の無料電話相談を開始しました。9月を「過重労働重点月間」に指定し、ハローワーク利用者などから寄せられた苦情や通報を端緒に離職率が極端に高いなど若者の「使い捨て」が疑われる企業を把握し、監督指導を行うとされています。
ネットなどで若者を中心に、労働搾取をされていると感じられる入社を勧められない会社が「ブラック企業」と呼ばれています。「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」という書籍が原作の映画が公開されたのが2009年。ブラック企業というキーワードでの検索は700万件以上にも上るほどになっています。ネット上の声をはじめ、世論の高まりを受けて、「若者の使い捨て」をなくすことを目的に初めて厚生労働省による調査が開始されました。
1日に実施した相談の速報版によると1日の相談件数は1042件で、このうち、労働者本人からが716件(68.7%)、家族からが223件(21.4%)。相談の対象となった労働者の年齢は20代と30代で半数を占める結果となりました。相談内容(複数回答)で最も多かったのは賃金不払い残業(サービス残業)で556件(53.4%)。長時間労働・過重労働424件(39.7%)、パワーハラスメント163件(15.6%)と続いています。
企業側の立場に立てば、グレー企業だと認定された場合スケープゴートとして差し出されるのではないかと懸念する声もありますが、調査の主な観点は以下の2点です。
・時間外・休日労働が月45時間を超えて長くなるほど、長時間勤務が続いている。
・労働基準法第37条に違反する、賃金不払残業
企業側としては、過重労働による健康障害を防止するための対策と、賃金不払残業を解消するための管理を徹底しておくことが求められます。
【過重労働による健康障害を防止するための対策】
①
時間外・休日労働時間の削減
・時間外労働協定は、限度基準(「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」(平成10年労働省告示第154号))に適合したものとする
・ 月45時間を超える時間外労働が可能な場合にも、実際の時間外労働は
月45時間以下とするよう指導を行う。
・ 休日労働についても削減に努める指導を行う。
②
労働者の健康管理に係る措置の徹底
・ 健康管理体制を整備し、健康診断を実施。
・ 長時間にわたる時間外・休日労働を行った労働者に対する面接指導等を実施。
【賃金不払残業の解消】
①
労働時間適正把握基準(4 「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(平成13年4月、厚生労働省))を遵守する。
②
適正に労働時間の管理を行うためのシステムを整備する。
③
労働時間を適正に把握するための責任体制を明確化しチェック体制を整備する。