産休中の社会保険料免除も4月よりスタート! 産休・育休にまつわる手続き総まとめ
少子化対策として両立支援に関する法改正が続いています。給付等が拡充され、新たな手続きも増えているため、申請漏れなどがないよう手続きの全体の概要を確認しておきましょう。ここでは、社会保険の被保険者である女性社員が法定どおり産休を取って引き続き育休を取り、当初の予定どおり職場復帰するというケースを想定して説明していきます。
産休取得から復帰までに必要な手続きは下のとおりです。大きく「産前産後」「育休中」「復帰後」の3つに分類して説明していきましょう。
◆産前産後の手続き
(1)産休中の社会保険料免除
今年4月から産休中の社会保険料免除制度が始まっています。これまで育休中は免除制度がありましたが、産休中は給与の支払いがなくても社会保険料の支払いが必要でした。免除されるのは休業を開始した月から終了月の前月まで(終了日が月末の場合は場合は終了月まで)で、本人負担分と会社負担分が免除されます。今年の4月より前から産休に入っている人(※1)については4月分から免除されます。
免除を受けるには産休期間中に年金事務所等へ届出をおこなう必要があります。出産前に届け出た場合、実際の出産日が予定より遅れたり早まったりして休業終了日が変われば、変更届を提出する必要があります。なお、雇用保険料はその月に実際に支給された賃金額に対して発生するので、賃金がゼロであれば保険料は発生しません。
※1:4月29日までに産休が終了した人を除く。
(2)出産手当金
出産のために会社を休み、給与を受けられないときは、「出産手当金」として標準報酬日額※2の3分の2に相当する額が、産前42日(双子以上の場合98日)、産後56日間支給されます。出産が予定より遅れた場合は産前の分が42日十αで支給され、早まった場合は産前の分が少なくなります。産休中に給与が少しでも支給されれば、その分出産手当金は減額されます。
申詰は、産休終了後にまとめてでも、複数回に分けておこなってもかまいません(協会けんぽの場合)。
※2:給与をいくつかの等級に区分した報酬にあてはめた「標準報酬月額」の30分の1。
(3)出産育児一時金
出産費用の補助として原則42万円の「出産育児一時金」が支給されます。以前は出産費用を一旦本人が負担した後、申請によってお金が返ってくるという流れでしたが、平成21年10月からは健康保険から医療機関に対し直接出産育児一時金が支払われる「直接支払制度」ができました。
実際にかかった費用が42万円を超える場合は本人が医療機関に差額を支払い、42万円未満であった場合は、後日残りの額を健康保険に請求することになります。一部の小規模な医療機関で直接払い制度に対応していない場合は「受取代理制度」によって同様の措置が受けられます。ただしこの場合、事前に健康保険に申請しておく必要があります。
※3:健保組合によっては付加金の請求が必要な場合もあります。
(4)子を扶養家族にする
出生した子を健康保険の被扶養者にします。夫婦ともに働いている場合、原則的には収入の多い方の被扶養者になります。
◆育休中の手続き
(5)育休中の社会保険料免除
育休の開始月から終了月の前月まで(終了日が月末の場合は終了月まで)社会保険料の本人負担分と会社負担分が免除されます。産休中の免除を受けていても、育休については育休期間中にあらためて年金事務所等へ免除の申出が必要です。最長で3歳に達するまで免除されますが、その都度申出が必要です。なお、当初の予定より早く復帰する場合は終了届も必要です。
(6)育児休業給付金
1歳に満たない子を養育するための育休を取得する期間について、「育児休業給付金」として休業前賃金の50%が支給されます。今年4月1日以降に開始される休業については、
最長6か月間に限って給付率は67%に引き上げられるよう改正が行われました。
休業中に賃金の支払いがある場合は、給付と賃金を合わせて休業前賃金の80%を上限に給付が減額されます。休業開始から1ヵ月ごとに区切った期間を「支給単位期間」とし、2ヵ月に1回申請をおこないます。初回の申請は休業開始日から起算して4カ月を経過する月の月末までで、通常は初回申請と受給資格の確認をあわせておこないます。申請をおこなうと次回の申請書(次回の申請期日が印字)が交付される仕組みです。2ヵ月に1回の申請となり、期間も長いため忘れがちですが、申請期間を過ぎると給付を受けられないため注意しなければなりません。
保育所に入所できないなどの事情があれば、1歳6カ月まで給付の延長申請が可能です。ここでいう保育所は認可保育所のことで、入所希望日を「子の誕生日以前」として実際に市区町村へ申込みをしていることが必要です。入所申込みが早くに締め切られる市区町村・もあるので早めに確認するよう本人に注意を促しておきましょう。
◆復帰後の手続き
(7)年金が減額されない手続き
3歳未満の子を養育中の労働者については勤務時間の短縮などにより賃金が減少することも多いため、将来、年金の額が不利にならないような特例(「養育期間の特例制度」)が設けられています。標準報酬月額が下がり保険料が下がっても、その期間は従前の標準報酬月額とみなして将来受け取る年金額が計算されるというものです。復帰後すぐに標準報酬月額が下がらない場合でも、念のため届出をしておくとよいでしょう。残業が減るなどして標準報酬月額が下がったときに特例が受けられます。3歳未満の子を養育しているのであれば、育児以外の理由で標準報酬月額が下がった場合でも特例を受けられます。
(8)復帰後の保険料軽減
育休からの復帰後に賃金が低下した場合、通常の随時改定(月額変更届)の要件に該当していなくても標準報酬月額の改定をおこなうことができます。保険料が少しでも安くなればそれだけ労働者の手取り額が増えるということです。申請漏れのないようにしましょう。