労働生産性と雇用・労働問題への対応-平成27年版 労働経済白書より
厚生労働省がまとめ閣議で報告した平成27年版の労働経済白書。課題として、生産性の低さが指摘され、より効率的な働き方の実現を促す必要があるとしています。内容を抜粋してご紹介しましょう。
■労働経済の推移と特徴
・2014年度平均で完全失業率は3.5%と17年ぶりの水準 となり、有効求人倍率も1.11倍と23年ぶりの水準となるなど、雇用情勢は着実に改善が進んでいます。また、正規雇用労働者の増加や、不本意に正規雇用 以外の雇用形態で従事する労働者の減少といった動きもみられています。
・2015年の春季労使交渉においては、妥結額・賃上げ 率ともに前年を上回ったほか、中堅・中小企業においても賃上げの動きがみられました。
■経済再生に向けた我が国の課題
・経済の好循環の継続に向けて、賃金の上昇が消費の 喚起に重要であり、そのためには労働生産性向上の取組が不可欠となっています。
・労働生産性を欧米諸国と比較すると、上昇率 は遜色ないが、水準は低くなっています。
・産業別の労働生産性水準を米国と比べると、非製造業を中心に低く、この要因として、IT投資が米国と比較して過小であることが考えられます。また、IT投資 はブランド資産・組織改編や人的資本投資が同時的に 取り組まれることでその成長への寄与を高めるが、そうした投資も過小であることが課題だと考えられます。
■より効率的な働き方の実現に向けて
就労参加を促すには、長時間労働の是正等、働き方の見直しが必要となります。
【働き方の現状】
・労働者の総実労働時間はパートタイム労働者比率の上昇等により減少しているが、一般労働者の総実労働時間は大きく変化していない。
・1週間の就業時間が60時間以上の労働者について、産業別にみると宿泊業、飲食サービス業、運輸業、郵便業、生活関連サービス業、娯楽業で割合が高い。また、年齢別にみると、男性で、1週間の就業時間が60時間以上である正規の職員・従業員の割合は、20歳台後半や30歳台で高い。
【労使双方からみる働き方の現状】
・労使双方への調査によると、所定外労働時間が発生する理由としては、労使ともに、業務の繁閑が激しい、突発的な業務が生じやすい、人手不足を挙げる割合が高い。
・それらに加えて、労働者側は、「自分が納得できるまで仕上げたいから」とする割合が高い。一方、「残業手当や休日手当を稼ぎたいから」とする割合は低い。
・企業側は、「顧客の都合上、所定外でないとできない仕事があるから」「仕事の進め方にムダがあるから」等に加え、「能力・技術不足で時間がかかってしまう従業員がいるから」とする割合が高い。
所定外労働が発生する理由として、労使双方で、業務の繁閑、人手不足、顧客対応等を挙げているが、この他、企業側は労働者の能力、技術不足、労働者側は納得できるまで仕上げたいとの回答も多くなっています。
所定外労働時間の削減に取り組み、短縮した企業では、実態把握、注意喚起、仕事の内容、分担の見直し、トップの呼び掛け等を行っており、そうした企業ほど、自社の労働生産性は同業他社に比べて高いと認識する傾向があるます。
(企業ヒアリングによれば、労働時間削減により疲労軽減、自己研さんの効果があげられています。)労働時間を削減しつつ、生産活動を維持・向上していくためには、労働生産性の向上や労働投入の増加が必要になります。教育訓練に取り組んでいる企業は、自社の労働生産性が同業他社と比べて高いと認識し、売上高(過去3年間)が増加したとする割合が高くなっています。追加で就業を希望する者、勤務時間・休日などが希望と合わず失業している者などが、希望に応じて労働参加できるよう、ニーズに応じた多様な働き方を提供することが重要になります。