厚生年金・健康保険:負担増、健保全体で分担 パート加入拡大に伴い
パートら非正規雇用労働者への厚生年金・健康保険の適用拡大に関し、厚生労働省は19日、パートを多く雇う企業の健康保険組合(健保組合)の負担急増を緩和する方針を公表した。健保組合は加入者が多いほど医療、介護の高齢者向け拠出金が膨らむ仕組みだが、負担増がパートの多い業種に偏らないよう、当面の間、パート加入に伴う拠出増を勤め人全体で分かち合う。
健保組合などは75歳以上の人の医療、介護費に拠出金を払っている。拠出額は加入者数に応じて決まるため、適用拡大によってパートらの健保加入が増える外食、流通産業などは支払いが増える。厚労省の試算では約700億円の負担増だ。
一方、社員の妻らを多く扶養している健保は、扶養家族がパート先の健保に入って扶養から抜けるため、その分負担が減る。給与水準が高い大企業などが中心で、拠出は全体で約300億円少なくて済むようになる。公務員らの共済組合も80億円の負担減となる。
同省は、月収9万8000円以下の加入者は0.1人か0.2人として数え、パートの増える健保の負担が急増しない仕組みとする。穴埋めは他の健保や共済組合など勤め人の保険全体で負担する。
政府は適用拡大の対象を(1)週の労働時間20時間以上(2)年収94万円以上(3)従業員501人以上の企業で勤務(4)勤続1年以上--のすべてを満たす約45万人とする意向で、16年度の導入を目指している。
適用拡大に伴い、国の負担も300億円浮く。加入者増の健保は年金、医療保険料の事業主負担も増えるため、同省は浮く国費を企業などの保険料軽減策に充てる考えだ。
厚労省は19日、適用拡大対象者45万人の内訳を▽国民年金加入者(1号)約14万人▽配偶者らの扶養を受ける人(第3号被保険者)約22万人▽60歳以上約9万人--と公表した。ただ、同省は高齢者医療制度改革で、健保拠出金を加入者数でなく加入者の平均給与に応じ徴収する方針を示している。【山田夢留】
毎日新聞 2012年3月20日 東京朝刊