最高裁判決:メンタル不調が疑われる社員への諭旨退職は無効
精神面の不調から出社しなかった男性社員を諭旨退職とした処分の妥当性が争われた事件で、最高裁は4月27日、諭旨退職とした会社の処分は無効と判断しました。
男性社員は、被害妄想など何らかの精神的な不調により、実際には事実として存在しないにもかかわらず、盗撮による日常生活の監視や職場での嫌がらせを受けていると訴え、会社に調査を要望していました。「問題が解決しなければ出勤しない」と上司に伝え、有給休暇をすべて取得後も40日間出勤しなかったところ、会社は無断欠勤を理由に諭旨退職処分としたものです。
◆メンタル不調者に対する配慮義務
一審では、メンタルヘルス不調者に対する会社の配慮義務については主張されておらず、「職場放棄」「職場秩序を著しく乱した」などとして諭旨退職を認める判決が下されました。
これに対し二審では、メンタルヘルス対策として休職や労働免除などの配慮義務違反について当事者より主張があり、判決においてもその点が重視され、諭旨退職が無効とされました。
最高裁でも二審判決を支持し、「このような精神的な不調のために欠勤を続けていると認められる労働者に対しては、精神的な不調が解消されない限り引き続き出勤しないことが予想される」ため、「精神科医による健康診断を実施するなどした上で、診断結果に応じて、必要な場合は治療を勧めた上で休職等の処分を検討し、その後の経過を見るなどの対応をとるべき」だとしています。
会社は、欠勤の理由が、実際には存在しない理由にもとづくものであることから、欠勤を「正当な理由」なく無断でされたものとして懲戒処分をおこないましたが、最高裁では、精神的不調が原因と認められる本件のような事情のもとでは、欠勤に「正当な理由」があったと解さざるを得ず、懲戒処分は無効と判断しました。
メンタルヘルス不調者への対応は非常に難しいものです。しかし、今回の判決からもわかるように、会社は、問題行動や無断欠勤という事実のみをもって処分するのではなく、その背景にある精神面の不調にも配慮した上で適切に対応していかなければならない
と言えるでしょう。