厚労省が退職強要の有無等を聞き取り調査
厚生労働省は1月29日、大手電機メーカーなど大企業5社において社員の退職強要がおこなわれているとの一部報道を受け、報道にあった5社に対し実情の聞き取り調査を実施し、このほど「違法な退職強要はなかった」との調査結果を公表しました。
◆過度な退職勧奨は違法
報道では、大手企業において「追い出し部屋」などと呼ばれる部署が存在し、退職などを迫る行為がおこなわれているというものでしたが、調査の結果、明らかに違法な退職強要をおこなっていると考えられる事案は確認されなかったということです。違法な退職強要とは、ことさら多く、長期に渡って退職勧奨をおこなうなど、労働者の自由な意思決定を妨げるような状況で実施されるものをいい、こうした違法な退職勧奨は権利の侵害として無効となります。
たとえば、航空会社の客室乗務員の退職勧奨について違法とされた裁判例では、約4カ月間にわたり5人の上司らが30数回もの面談や話し合いをおこない、中には約8時間にわたるものもあったといいます。また、面談において上司らは「別の道があるだろう」「他の社員の迷惑」などと述べ、大声を出したり机をたたいたりしていました。
◆厳しい環境でも適切な労務管理を
厚生労働省は、経営状況が悪化したために、やむなく労働条件の変更や雇用調整をおこなわざるを得ない場合でも、法令や労使間で決めたルールを巡守し、事前に労使が十分な話し合いをおこなうよう求めています。
また、厚生労働省のパンフレット「厳しい経営環境の下での労務管理のポイント」などを参考に対応してほしいとしています。パンフレットには、次のような内容が示されています。
① 金の支払等について労働基準法等に定められたルール(賃金の支払5原則、賃金の支払確保、休業手当の支払いなど)を遵守すること
② 労働条件の引き下げ等をおこなう場合、法令の手続き等(就業規則による変更など)を遵守するとともに事前に十分な労使間での話し合いをおこなうこと
③労働契約法等の定めを遵守し、解雇・雇止め等に関する裁判例も参考にして適切に労務管理をおこなうこと