採用条件は「喫煙しない」こと-増える嫌煙企業
日本たばこ産業株式会社<2914>が、昨年7月に公表した2012年「全国たばこ喫煙者率調査」によると、同年5月時点での喫煙率は、男女計で21.1%、喫煙人口の推計は2216万人となっており、11年に比べると63万人の減少となっている。
毎年5月31日は世界保健機関WHOが制定した、禁煙を推進するための記念日、いわゆる「世界禁煙デー」だ。日本もこの取り組みに賛同しており、厚生労働省では5月31日(金)~6月6日(木)までを禁煙週間としている。
しかしながら、この記念日に対する国民の認知度はそれほど高くなく、宣伝も幾分控えめだ。また、WHOが掲げた今年のテーマは「Ban tobacco advertising, promotion and sponsorship」(「タバコの宣伝、販売促進活動、スポンサー活動を禁止しよう」)であったにもかかわらず、日本はそれを踏襲せず「タバコによる健康影響を正しく理解しよう」という独自の抽象的なテーマを掲げたことから「税収を気にしているのではないか」とか「タバコ業界に配慮しすぎだ」など、嫌煙家や禁煙団体から厳しい意見もあがった。
日本では2003年に健康増進法が施行されて以降、受動喫煙の防止のため、公共施設や飲食店、交通機関などでの分煙や禁煙が急速に進展した。
最近では町のエリア全域が禁煙になっていたり、社内での喫煙を禁止している企業も珍しくない。京都の立命館大学も今春、喫煙所を完全に閉鎖して全面禁煙となった。
また、ここ数年「喫煙しないこと」を雇用の条件にする会社も増えている。例えば、フィットネスクラブの草分けであるセントラルスポーツ株式会社<4801>や北陸3県を中心に靴チェーンを展開するワシントン靴店、製薬会社のロート製薬<4527>などが、採用時に喫煙の有無を確認していることで知られている。
ロート製薬では、喫煙の有無の確認は自己申告としており、特別の検査などは行ってはいない。しかしながら、美と健康に貢献するプロフェッショナルとして、まず自分たち自身が健康でなくてはならないという意識のもと、社員全員で非喫煙・非肥満への取り組みを行っており、新規採用者にも、それに賛同するように促している。
言うまでもなく、喫煙の習慣が健康に与える影響は大きい。WHOは、2030年までに喫煙による年間死亡者数が800万人に到達する恐れがあるとの報告書を発表している。
喫煙は個人の嗜好であるので厳しくいうのもどうかという声もあるが、喫煙による年間死亡者の一割以上が、受動喫煙の影響によって命を落としていると考えられており、決して喫煙者個人の問題にとどまるものとはいえない。
また、最近はビジネスの場面でも喫煙者が敬遠されるような場面も増えている。健康のためだけでなく、ロート製薬のようなプロ意識をもって喫煙に取り組んでみるのも、良い手段かもしれない。