精神障害による労災支給決定件数が475件で過去最高を更新
長時間労働や仕事のストレスによって過重な負荷がかかり、従業員が脳・心臓疾患や精神障害等を発症するケースが増加しています。このように過重労働やハラスメントによる健康障害の問題が深刻化するのに伴い、脳・心臓疾患あるいは精神障害等の発症に関して労災保険を請求するケースも増加しています。先日、この請求状況に関する平成24年度の調査結果が厚生労働省より発表されました。以下ではこの結果について見ていくことにしましょう。
1.脳・心臓疾患の労災補償状況
脳・心臓疾患の請求件数は842件となり、前年の898件から56件減少して3年ぶりに減少に転じました。また支給決定件数については310件から28件増加して338件となり、こちらは2年連続で増加し、依然として高水準で推移しています。支給決定件数において業種別にみていくと「運輸業、郵便業」、「卸売業、小売業」、「製造業」の順になっています。年齢別では50代、60代、40代の順で多く、いずれも200件を超えています。
2. 精神障害等の労災補償状況
精神障害等の請求件数は、平成24年度は前年の1,272件から15件減少して1,257件となりましたがこちらも依然として高水準で推移しています。一方、支給決定件数については前年の325件から150件の大幅増加があり475件となり、過去最高を更新する結果となりました。支給決定件数を業種別に見ていくと、「製造業」、「卸売業、小売業」、「運輸業、郵便業」および「医療、福祉」の順になっています。また、年齢別としては30代と40代を中心に支給決定件数が多くなっています。
この精神障害等の労災認定は平成23年12月26日に基準の改定(「心理的負荷による精神障害の認定基準について」)が実施され、労災認定の判断で用いられる心理的負荷評価表の内容が具体化されました。その結果、支給決定件数が増加したと考えられます。
上記の支給決定件数475件を具体的な出来事別に分類すると上位項目は次のとおりとなっており、改めて過重労働やハラスメントに気を配る必要があることが分かります。
(1)仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった(59件)
(2)(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた(55件)
(3)悲惨な事故や災害の体験、目撃をした(51件)
特に精神障害の場合には、職場内での人間関係が原因となることが多いため、企業としては過重労働の防止と併せて、就業規則の服務規律等でハラスメントを禁止する旨の内容を定め、従業員に周知・徹底したり、管理職を中心とした社内研修を実施したりするなど、具体的な対策が求められています。
■参考リンク
厚生労働省「平成24年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」まとめ」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000034xn0.html
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。