労働時間の基礎知識 朝の掃除は労働時間?
労働基準法の中でも「労働時間」は奥の深いテーマです。知っているようでなかなか明確な定義がしにくい「労働時間」について、今回は「朝の掃除は労働時間になるのか?」解説していきます。
労働時間とは、就労のために「使用者の指揮命令下におかれている」時間をいいます。言い換えると、「拘束時間から休憩時間を除いた時間」ですが、実際の現場では「これは労働時間?」と判断に迷うような時間があります。
たとえば朝、始業前に職場の掃除をする時間は労働時間でしょうか?職場によっては、慣行的に始業時刻前に皆で、あるいは一部の人で掃除をするところがあるでしょう。清掃業者などを入れていない場合、こうした職場の掃除はその職場の誰かがやらなければならないものですが、一方では自分たちが働きやすい環境を整えるための任意の自発的活動としておこなわれていることもあります。
◆強制的なものか、自発的なものか
これも、指揮命令下にあるかどうかで考えます。つまり、命令によって強制的に掃除をさせている場合は労働時間になり、労働者が自発的に掃除をしている場合は労働時間になりません。そうは言っても、日本社会では協調性が強く求められるため、命令によるものか、自発的なものか判断しづらいケースも多いのではないでしょうか。以下、具体的なケースを見てみましよう。
◆当番制やマイナス評価は
たとえば、各社員が朝、気がついたときに自分の周りだけ掃除したり、好意的に同じチームの人の机を拭いてあげたりするケース。これは労働時間と言えないでしょう。
一方、何曜日の朝は誰がどこを掃除するなどと当番制にして事実上強制的に掃除をさせており、使用者がその強制の事実を知りながら容認しているようなケース。この場合は労働時間と言えるでしょう。また、形としては命令になっておらず、「できれば参加しましょう」などとうたっていても、始業前の掃除に参加しないことで上司から叱られたり、マイナスの評価材料になるなど、労働者にとって不利益な取り扱いがおこなわれるケース。これも事実上の強制がおこなわれていることになり労働時間と言えるでしょう。