正しく知ろう、労働時間 出張中の移動時間は労働時間?
労働基準法の中でも「労働時間」は奥の深いテーマです。知っているようで正確には知らないこと、誤解していることも多いのではないでしょうか。労働時間とは、就労のために「使用者の指揮命令下におかれている」時間をいいます。言い換えると、「拘束時間から休憩時間を除いた時間」ですが、実際の現場では「これは労働時間?」と判断に迷うような時があります。
たとえば、出張では早朝に自宅を出たり、休日のうちに現地に移動して月曜日の朝から仕事ということがあります。「通勤時間」と考えるにはあまりにも長い移動時間ですね。こうした場合、所定労働時間中に移動する時間はもちろん労働時間ですが、早朝や夜間など、所定労働時間外に移動する時間まで労働時間になるのでしょうか。
◆原則、労働時間にならない
こうした移動時間は、乗り物から降りて自由に行動できないので拘束されている時間ではありますが、到着までは眠っていようが読書をしようがまったく自由です。ですから休憩時間と同じような性質のものとみなされ、原則として労働時間になりません。ですが、通常より早く家を出なければならないなどの負担に配慮して、多くの企業では日当など手当をつけています。
◆労働時間になるケースも
ただし、出張中の移動時間が労働時間となるケースもあります。たとえば、商品や機材など物品を無事に運搬すること自体が出張の目的である場合や、上司に同行し、移動中に仕事の打ち合わせをするような場合です。
◆事業場外のみなし労働時間制は就業規則への規定が必要
出張のように社外で仕事をする場合は、何時から何時までが休憩時間や移動時間で、何時から何時までが労働時間なのか、正確に把握して算定することが難しくなります。このような場合は、「事業場外のみなし労働時間制」を適用して、所定労働時間働いたものとみなすことができます。
ただし、上司が同行して労働時間を把握・管理できる場合などは事業場外のみなし労働時間制を適用できません。なお、事業場外のみなし労働時間制を適用するには就業規則等に規定しておくことが必要です。