時代が求める人材は「挑戦・主体性・グローバル」
若者よ、失敗を恐れずに挑戦を-。世界競争力の強化が求められる一方で、若者の「内向き志向」が指摘されるなど、次代を担う人材の育成に対する不安の声が高まっていることを踏まえ、産経新聞社と駿台教育研究所は、企業と大学を対象に「時代が求める人材像」調査を実施した。結果から浮かびあがった若者に期待するキーワード、それは「挑戦」「主体性」「グローバル」の3つだ。
調査は、東証1部上場企業900社と全国749の四年制大学を対象に実施。106社、338大学から回答があった(回答率は企業12%、大学45%)。
「『期待する人材像』に共通して必要と考える姿勢」を一語で回答を求めたところ、大学、企業とも1位は「挑戦」(「チャレンジ」などを含む)、2位は「志」だった。企業の3割強は「挑戦」と回答し、「内向き志向」「安定志向」と指摘される若者のチャレンジ精神の欠如への懸念を読み取ることができる。
また調査では、「時代が求める人材」を育てる上で、「大学が教育上、重視すべきキーワード」も自由記述で求めた。その結果、大学、企業ともトップは、受け身の姿勢からの脱却を促す「主体性」で、2位は大学が「グローバル」、企業は「行動力」だった。
これらキーワードを備えた人材の育成に「今の大学は対応できているか」を聞いたところ、大学の78%が「できている」と自負している一方で、企業の3割近くが「かなりできていない」と回答するなど全体の85%が不満を示した。企業からは「大学でのキャリア教育が、採用面接対策などのスキルや資格の習得支援に偏っている」という指摘が少なくなかった。
「大学と企業で育成すべき人材像の方向性はほぼ共有できているのに、そのアプローチに対する評価に大きな差があって驚いた」-。「時代が求める人材像」調査の集計を終え、駿台教育研究所の担当者はそう語った。人材育成に関する大学と企業のミスマッチは長く指摘されてきたが、調査からは、基礎学力の底上げや縦割り組織の打破に腐心する大学の姿と、時代を見据えた自己改革が進まない大学に対する企業の憤りが垣間見える。
「主体性」や「グローバルな視点」を備えた人材の育成に「大学は対応できているか」。この質問に85%の企業が不満の意思表示をした。そのうちの1社の関西のメーカーは、アンケート用紙に厳しくこう記した。「今の大学は中途半端な専門性を無駄に長く提供しているに過ぎない。海外の大学生との実践力(知識を生かした行動)の差は広がるばかりだ。教育する側の大多数の意識が、高度成長期から転換できていない」
企業による大学批判の記述には、「受け身」や「受動」という指摘が目立つ。
「画一的なレクチャー型講義が中心で、学生が受け身となる授業が多い」
「学生が主体的に取り組める授業を増やすべきだ。受動的な講義が多すぎる」
今回のアンケート結果から浮かび上がった「時代が求める人材像」は、主体的に物事を考え、積極的に発信できる若者。このような人材を育てていくための実践が大学で進まないことへの憤りがうかがえる。
一方、「できていない」とした2割の大学の記述を見ると、理由は2つに大別できる。「学生の基礎学力不足」と「学内のコンセンサス不足」だ。
前者は大学全入時代到来とともに深刻化する学生の基礎学力低下対策に追われる現状を示す。後者は「必要とされている人材像」に対する認識を学内で共有し、スピード感をもって取り組むことができない大学の縦割り構造を表している。
駿台教育研究所の坊野宏一事務長は「大学と企業の意識ギャップは深刻であると同時に、今のままでは次代の人材の育成にはマイナスが大きいと考える。育成に向けたアプローチの仕方について、産学間で真剣に議論した方がいい」と話している。