人材育成には「ゲーム」/効率性の改善や指導力の向上に一助
チームの成績が振るわず、利益が減少している時には、管理職は何をすべきなのか。意外かもしれないが、ゲームをすることが、会社の立て直しに取り組む経営幹部を助けることもあるという。
ただし、お勧めのゲームは、娯楽用コンピューターゲームなどではなく、オーダーメードのオンライン・シミュレーションゲームだ。
デンマークのコペンハーゲン・ビジネススクール(CBS)のシニアコンサルタントであるステファン・ロフバル氏によれば、ゲームはマネジメント能力の開発において大きな可能性を持っており、そのオンライン化によって、より深い能力開発につながるとの研究も多数あるという。
ビジネスの場におけるシミュレーションゲームは新しい話ではない。1930年代には既にビジネスの場でゲームが使用されていた。今日のゲームははるかに洗練されており、オンライン化もされ、意思決定のための訓練にも利用可能だ。「勝利」のためには、リーダーシップ論やマネジメントの知識が必要で、参加者は、様々な人材や資源を仮想現実の世界に適用させながら学んでいく。
CBSでは、複雑なバーチャル戦略ゲームやシンプルなボードゲーム形式のものなど20ものゲームが使用可能だ。修士課程などでその使用を拡大しているCBSでは、初めてゲームを使用した学期後の調査では、クラス平均の成績は14%向上し、リーダーシップに対する評価も8%向上したとしている。
ソレンセン氏は「企業はゲームを取り入れることで、販売担当者が新製品について理解するための時間を短縮できるようになるだろう。あるいは、新しい業務の運営方法や経営戦略の理解、新製品の開発に必要な時間を削減できるようになるかもしれない」との見方を示す。
60カ国近くに展開するポンプ製造会社グランドフォスでは、リレーション・テクノロジーズ社のゲームを生産効率向上のために工場の1つで使用している。
同社によると、各管理職は、担当分野における変更に関して詳細に計画を立てられるようになった。その結果、変更過程の様々な段階に対してより適切に準備ができるようになり、判断を下す前に、その判断がもたらしうる色々な結果についてより深く考えられるようにもなった。
さらに、シミュレーションゲームを体験した管理職は、動機付けや指導力の点で、部下からの評価も向上したという。
リレーション・テクノロジーズ社のソレンセン氏は、世界的な大企業でもそれぞれ独自の経営理論やリーダーシップ・スタイルを持っているため、将来的には、より多くの企業が、それぞれに適合するオーダーメードのゲームを必要とすると予測している。
米ハーバードなど世界中のビジネススクールがゲームを導入しており、企業の注目度も高い。
米コンサルティング会社マッキンゼーは、本格的なシミュレーションゲームは、詳細かつ実用的で現実世界のようなシナリオを多数の人に安価で提供できるため、実務研修を代替する「21世紀型の徒弟制度」にもなりうると指摘する。
2020年までに、フォーチュン500に入るような世界の最大手企業の4分の1以上でゲームが社員研修に採用されると予測する調査もある。
技術進化の動向に詳しいダニエル・ブラス氏は、優れたゲームには、楽しく、双方向化され、競争的で自己診断が可能なことが必要だと語る。ブラス氏はまた、スマートフォン(多機能携帯電話)などの各種端末から簡単にアクセスが可能なゲームが、あらゆるレベルでの学習・研修を高度化し高速化するとも付け加えた。
幹部職員研修ゲームを開発しているデンマークのリレーション・テクノロジーズ社の最高経営責任者(CEO)リーフ・ソレンセン氏は、ビジネスの世界でゲームは、効率性の改善と複雑な問題の解決に貢献できると語る。