部下への注意、どう与えるべき? 効果的な伝え方を探る
上司から注意を受けると、素直に受け入れ難いことも多い。だが近年の研究で、注意の仕方によっては仕事の生産性により良い影響を与えることがわかってきた。
ミシガン大学経営大学院では、褒める回数と批判する回数の比率に注目。比率の違いが生産性に与える影響を複数のチーム間で調査した。その結果、生産性が最も高かったチームでは褒める回数が批判する回数の約6倍に達すると判明。一方、生産性が最も低いチームでは褒める回数の3倍多く批判していた。
リーダーシップに関する相談業を営むジャック・ゼンガー氏は、批判は人の熱意ややる気を削ぐため、伝える際に非常に慎重になることが必要だと主張する。「(批判的なコメントは)唐突に行ってはならない。上司は部下に対して、仕事への貢献を感謝している旨を伝えるとともに、これから与えるコメントは仕事の能率アップが目的だということを理解させることが重要だ」と語る。
同氏はまた、プライバシーにも最大限の配慮が必要で、他人の面前で批判を行うべきではないと主張する。
デンマークで職場における幸福度を研究するアレキサンダー・ケラルフ氏によると、賞賛を受けず、仕事への貢献も認められないことは、職場での不満を生む大きな要因になる。
一方、部下を注意することの重要性も専門家は指摘する。ケラルフ氏は「良く出来ている点と改善すべき点をきちんと伝えることは非常に重要だ」とした上で、「多くの職場ではそういった注意を一切与えなかったり、批判することに終始してしまったりしている」と現状を憂う。
では褒めるときに注意すべき点はあるか。ケラルフ氏は、褒め言葉が形式的なものだと感じられる場合、逆効果になると警告する。
褒めるときは対象を具体的に示して、心を込めて行うことが大切だ。ゼンガー氏によると、単に「よくやった」と声をかけてもほとんど効果はない。しっかりと時間を割いて部下の対応や実績を具体的に示して賞賛することが、極めて大きなプラスの効果を生むことになるという。
褒めるときに心から言葉を送るのはいいが、批判時に感情が入ると大きな問題となる。ゼンガー氏は、怒りの感情を当事者のいずれかが持っていると、建設的な評価の伝達は難しくなると指摘する。
評価は双方向で行うことも大切だ。上司は部下に評価を伝えるだけでなく、部下から上司に対する評価を聞くことが望ましい。ゼンガー氏によると、部下に「あなたの上司として何かできることはないか」と問いかけることが重要だという。「それにより、我々は互いに学びあう存在であり、誰も完璧を求められてはいないというシグナルを送ることになる。また、上司が部下からの評価にどう対応するかが部下の手本にもなる」
では、部下が上司からの批判にどうしても耐えられない時にはどうするべきか。ケラルフ氏によると、上司と話し合う機会を持つことが重要で、「上司のどのような言動が我慢できないのか具体的に伝える必要がある」という。