中小企業の女性活用3つの取組みが成功の鍵
少子高齢化や市場の成熟化が進むなか、労働力として女性の力が注目されています。女性活用というと、大企業における取り組みが注目されがちですが、中小企業こそ女性の活躍の場となってきたのです。 ここでは、日本政策金融公庫総合研究所が昨年5月にまとめたレポート「中小企業の女性雇用に関する実態調査」の抜粋をご紹介しましょう(調査対象8,280社、有効回答企業数2,951社)。
◆人材確保に大きな効果
中小企業の経営者は、女性の活躍を促すことで、どのような効果を感じているのでしょうか。女性の活躍への取り組み別に見ると、「取り組んでいる」企業は、人材面、雰囲気・イメージ面で効果を感じている経営者が多いことがわかりました。「取り組んでいないが、今後取り組む方向」の企業と比較すると、特に「優秀な人材を確保できる」との回答割合が13.2ポイント(57.6%-44.4%)高く、人材確保において大きな効果を感じていると言えます。
◆阻害要因にはどう対応?
一方で、中小企業が女性の活躍を推進するうえでの阻害要因も少なくありません。女性の活躍に「取り組んでいる」中小企業では、「家事や育児の負担を考慮する必要がある」(48.4%)、「結婚や出産で退職する女性が多い」(39.7%)、「残業・出張・転勤をさせにくい」(35.4%)など、仕事と家庭の両立の難しさに阻害要因を感じています。 では、中小企業はそういった阻害要因にどのように対応しているのでしょうか。女性の活躍に積極的に取り組んでいる中小企業6社の事例をみると、以下の3つの取り組みを実施していることがわかりました。 事例企業に共通するのは「会社は人で成り立っている」という思いと、男女関係なく人材育成に力を入れているということでしょう。
①女性の活躍推進は段階的に着実に
まず女性の採用拡大と職域拡大をおこなってから女性管理職の登用を進める
A社(一般貨物自動車運送) 現会長が中国訪問時に中国人女性がバスの運転手をしているのを見て「トラックを女性が運転してもおかしくない」と考えたことから、女性ドライバーの募集・採用に至った。 「作業が丁寧、取引先側で起こったトラブルにも丁寧に対処してくれる」と取引先での評判も良いことから、「女性が他の職種でも同様に活躍すれば、大きな戦力になる」と、全職種で女性の採用を決断。女性リーダーの育成にも積極的に取り組むようになった。
②働きやすい職場環境を整備
育児休業など両立支援制度の整備、多能工化、仕事の効率化による業務時間短縮
B社(自動車部品、電気照明器具製造) 職掌・多能工化表を作成し、仕事を「誰にでもわかる・できる・任せられる」ようにしている。 これにより、突然休む必要が出た場合でも他の人が仕事を代替できるとともに、職掌把握、能力の継続的レベルアップが図られている。「自分でなくてもできる業務」のピックアップと当該業務の委譲による企業体質の強化にもつながっている。
③能力を発揮できる仕組みづくり
男性優先、男性中心と感じることのないように、人事評価基準の明確化、生産設備や生産工程の工夫による男女の垣根の解消
C社(和菓子・洋菓子の製造小売 企業理念、社員としての行動指針接客技術、作業手順を記載した「販売員ハンドブック」を作成配布し、作業のマニュアル化・標準に役立てている。ハンドブックの成熟度合いで販売員の評価を行うことにより、公平性も確保している 取り組みによって年間70~80にのぼっていた販売員の退職が、現在は同5~6人でとどまっている計画的な人員配置ができるようなった結果、店舗運営コストおよび採用コストを低減できている。