障害者雇用で会社や社員が成長
ダイバーシティは「多様性」という意味を持ち、人事労務の分野では、女性、外国人、高齢者、障害者を含め、多様な人材を活用していくことを言います。 画一的な人材の組織よりも、多様な人材を組み合わせた方が異質な意見やアイデアがぶつかり合ってこれまでにない画期的な製品や仕組みを生み出す ことができると考えられています。今回は、ダイバーシティを推進している事例として障害者雇用に取り組む企業をご紹介しましょう。
◆当初は否定的だった
リネンのクリーニング業等を営むT社では、百数十名の社員のうち20名が知的障害者です。社長は当初、障害者雇用には否定的でした。何か事件や事故が起こったら どうするのか…。しかし、それは自分の無知によるものだとわかったといいます。特別支援学校からの熱心な依頼により知的障害者がクリーニングを学 んでいる授業を見学に行き、一生懸命働く様子を見たからです。その後、職場実習生を1名受け入れ、人柄の良さもあり、採用に至りました。
◆周りの社員が成長する
障害のある人を雇用してから、T社はさまざまなことを学び経験しました。まず職場に大きな声で挨拶する習慣が生まれ、仕事の指示や注意など、 お互いに声を掛け合うようにもなりました。さらに迎え入れた社員たちの間には、事故がないように不要なものを片付ける配慮も定着しました。 特に新しく用意した設備はありませんが、機械操作の手順がわかるサインの貼り付け、荷物の種類を示すオリジナルタグなど、数字や色を取り入れた 誰もがわかりやすい職場づくりに努めました。また、障害のある人たちとともに会社や周りの社員たちも成長してきたといいます。
◆難しい問題は行政のサポートを
印刷・製本事業等を営むA社では、二百数十名の社員のうち二十数名が聴覚障害者です。最初は情報が伝わりきらずにさまざ まな失敗もありましたが、聴こえないことで何が不便なのか、どういう手助けが必要なのか、本人が周囲に積極的に伝えるようになり、周りも自然に聴 こえない人への理解と配慮ができるようになったといいます。 個々人の意欲や障害の特性を見極めて配属を考慮するなど受け入れる側が工夫しなければならない点もありますが、難しい問題については地域障害者 職業センターなどのサポートを受けるという方法もあります。